高齢になり、心身の活力が低下した「フレイル」と言われる状態の方が、日本に250万人以上おられます。フレイルはQOL(生活の質)を低下させて、他にも合併症を引き起こすリスクの引き金になります。

早期の段階に対処すれば、要介護状態を予防し自立した生活が可能です。そのためにも本人のみならず周囲の人も気を付け、生活習慣を見直し、フレイル対策をしてみましょう。

フレイルとは

フレイルとは、英語で「虚弱」の意味の「frailty」が元になった言葉です。これは健康な状態と要介護状態の中間の状態で、加齢に伴なう心身活動の低下と複数の慢性的な持病などにより影響されます。

重症化を予防するには、フレイルの状態に早期に気が付き対応することです。

フレイルの評価方法  ※J-CHS基準

項目の3つ以上該当する場合はフレイル状態

 項 目  評 価 基 準
 体重減少  6か月で、2~3kg以上の体重減少
 筋力低下  握力低下:男性 26kg未満、女性 18kg未満
 疲 労 感  わけもなく疲れたような感じがする
 歩行速度  通常歩行速度の低下(1.0m/秒未満)
 身体活動   軽い運動・体操、定期的な運動・スポーツなどをしていない

またフレイルは以下の3つの側面が相互に影響することで悪化します。

  1. 身体的フレイル(低栄養、嚥下・摂食機能の低下、転倒を繰り返すなど)
  2. 精神的フレイル(認知機能の低下や意欲・判断力の低下、抑うつなど)
  3. 社会的フレイル(社会参加がない、引きこもり、他者との交流がないなど)

ロコモティブシンドロームとサルコペニアとの関係

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により歩行や日常生活がままならなくなり、要介護のリスクが高い状態のことです。

サルコペニアは、筋肉量が減り身体機能が低下した状態で、ロコモティブシンドロームの基礎疾患と位置づけられています。

これらは先ほど述べたフレイルの3つの側面のうちの身体的フレイルに含まれます。

フレイル対策

フレイルには身体的・精神的・社会的の3つの側面から総合的に働きかける必要性があります。

① 食 事

一人暮らしの高齢者は、孤食(一人で食事を取ること)になりやすく、ただでさえ食欲も低下し食事の量も減り、低栄養状態になりやすいです。そこに加え、孤食では食事の品数は少なく、食べる食材も偏りがちです。

そこで積極的に友人や家族、地域の人などと食事の機会つくって、低栄養を防ぎましょう。筋肉量減少を防ぐためにタンパク質を十分に取ってください。

② 口腔ケア

食事するには咀嚼(噛む)、嚥下(飲み込む)する必要があります。これら口腔機能は加齢とともに低下しやすく、硬いものが食べれなくなったり、むせやすくなったりします。

定期的な歯科健診を受け口腔ケアをし、噛み応えのある食材を選んでよく噛む習慣をつけて、食事の質を維持するようこころがけてください。

③ 運 動

「健康づくりのための身体活動指針」として厚生労働省は、今よりも10分多く身体を動かす「プラス・テン(+10)」を呼び掛けていて、いつもより10分多く身体を動かす習慣を促しています。

これは決して難しいことをする必要はありません。「移動を車から徒歩にする」「エスカレーターではなく階段を利用する」「TVを見ながら体操などをする」など、できることから少しずつ実践していきましょう。

④ 持病のコントロール

高齢になると高血圧や糖尿病、腎臓病、心臓病、呼吸器の病気、整形外科的疾患など慢性的な持病を抱えがちです。

悪化しないよう体調管理に気を付けなければなりません。

⑤ 感染症の予防

高齢になると免疫力が低下しがちで、インフルエンザや肺炎などに罹患しやすくなります。これらをきっかけに重症化し入院し、さらに寝たきりになってしまうこともあります。

日ごろから体調管理をしっかり行い免疫力を保ち、感染症に強い身体づくりをしてください。

⑥ 社会参加

家に閉じこもりがちになると、精神的、社会的などの側面からフレイルが重症化してしまいます。

自分が得意なこと、できることを見つけ地域のボランティア等に参加することで、生きがいを見つけ出して、社会的なつながりを自覚することにより、気力を取り戻すことができます。

活き活きとと生活することは、心身ともに元気にします。

鍼灸とフレイル

私たちの身体には、薬品などに頼らなくても病気に勝ち自然に生きようとする能力があります。それには有害なものが体内に侵入するのを防御する力、その防御線を乗り越えて体内に侵入したものを攻撃する力(免疫力)、傷ついた場合に速やかに元に戻す力があります。これらの力がお互いに協調しあって働くことで私たちは生存しています。これら本来備わっている生存能力をいわゆる「自然治癒力」といい、フレイル対策の味方となるでしょう。

自律神経は意識してもコントールできない身体機能をコントロールする生命維持装置です。ですから、いわゆる自然治癒力も自律神経の状態に左右されます。となれば自律神経を整えられるなら自然治癒力が向上し、フレイルの予防も可能となります。

そして鍼灸は自律神経のバランスを整える効果があるのです!

鍼灸をしてもらうことにより自律神経が整い、病気に抵抗する防御力や免疫力、傷ついたところを自ら修復する再生力などが高まります。つまり自然治癒力が活性化し、自立した生活を過ごせるようになります。

そして鍼灸をしてもらうには当然、鍼灸院を訪れ鍼灸師と対面しますので、他者との交流をすることとなりますので精神的・社会的にもフレイル予防につながります。

定期的に鍼灸をしてもらってはいかがしょうか?きっとお役にたつことでしょう。